ハシリグモ類の生態学的地位

  • 発表者: 仲條竜太
  • 要旨
    • 捕食者であるハシリグモ類にとって,餌生物は重要な資源のひとつである.ハシリグモ類は水面や葉上で網を使わずに獲物を待ち伏せ,振動を感知して襲いかかる.振動に対して反射的に捕食行動をとるため,捕食の成功には餌生物とハシリグモとの体サイズの関係が大きく影響を及ぼす.またハシリグモの体サイズは,これまでの餌資源の獲得履歴を反映している.いつ,どのような体サイズ(≒成長段階)の個体が存在するのか,すなわち生活史は,生物の利用できる餌資源を考える上で重要な情報である.ハシリグモ類の利用している餌資源を明らかにするため,基礎的な情報として生活史を明らかにし,さらに直接観察とDNA分析の2つの手法を用いて餌資源を明らかにすることを試みた.次回の地理生態学セミナーでは,2006年8月から2007年9月にかけての調査から明らかになった房総丘陵に生息する4種のハシリグモの生活史と,付随的に明らかにされたいくつかの知見について報告する.また餌分析の進行状況の報告とともに,DNAを用いたクモの糞からの食性解析の方法についても紹介する.

  • KEYWORDS: ハシリグモ,生活史,餌資源,DNAバーコード